てんむす
私がTwitterを始めたのは一昨年の秋ですが、その前にも別名アカウントがありました。トレードを通して知り合った方々とは顔なじみ(実際には会っていませんが)になり、Twitterが楽しくなってきた頃のことです。
とある有名なアカウントの確信めいた呟きが目に入りました。
「Aという銘柄は初動。表に出ていない材料が豊富だから、ここから数倍は堅いだろう」
てんむす
目次
煽り屋さん銘柄Aとの出会い
昔々ある東証の片隅に、Aという会社がありました。
低時価総額、低価格。いわゆるクソ株というやつです。
そしてTwitter村には、その会社の将来性や期待をもとに、今の株価がいかに安いか、チャート的にも初動であるかなど、あらゆる方向から魅力を語ってくれる人がいました。
彼(彼女?)はTwitterでは有名で、フォロワーも多い煽り屋さんと呼ばれる人でした。
当時、私は個別銘柄を材料で選定する知識がありませんでしたので、薦められた銘柄のストーリーがとても魅力的に見えたのです。
とはいえ、最初は懐疑的でした。
てんむす
ところが、慎重になった私を尻目にAの株価はどんどん上がっていきます。たまに押し目をつけながらも、週足で見ると右肩上がりです。日足も週足も月足もパーフェクトオーダー、どう見ても上昇トレンド。あの日、飛び込まなかったことを後悔しました。
今思えば、この時点で初動に乗り遅れているので、Aは監視に回して押し目を狙うべきだったのです。もしくは、利益が出たら速攻で売り抜けるべきだったのです。
でも、当時の私は上がりに上がったその位置で、がっつりとポジションをとってしまいました。
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それからも、しばらく株価は上がり続けました。デイでのトレードはしなくなり、自分で調べてリストにした監視銘柄も見なくなり、毎日増えていく含み益を眺めるだけで幸せでした。少しでも下がれば押し目だと喜んで買い増す日々。Twitterやヤフー掲示板ではみんなAを買ったという報告で溢れているので、Aの素晴らしさと将来を語ること自体が楽しいイベントのように思えてきました。
しかし、当然ながらそんなお気楽な日々は長くは続きません。
お花畑という天井
その時点で、株価は移動平均線から離れたところにありました。
初動から三倍以上に膨れ上がっていた銘柄でしたが、Twitterでは更にテンバガー(十倍)が狙えるという話まで出はじめます。
てんむす
いわゆる「お花畑」というやつです。
一般的に、お花畑の雰囲気になったら、一旦売りです。たとえ将来性があろうとも、今後数年での伸びしろがあろうとも、直近に材料が出る可能性があろうとも、売りです。
どうしても売りたくないならば、せめて半分は売って利益を確保すべきところです。
今なら分かることですが、当時は自分までもお花畑になっていました。そして、買い増してガチホ(ホールドし続けること)を続けてしまったのです。
そして下落
そして、トレンド転換をした運命の日。
株価は前場でその日のストップ高をつけ、タイムラインは最高潮に盛りあがりました。当然ですが、私のタイムラインにはAのことを話す人しかいないわけです。Aに対してプラスのことを呟く人だけをフォローしていたので、私には株価が無限に上がっていくお祭りに見えました。このまま明日も寄らずのストップ高を演じるかもしれないとまで言われていましたから。
しかし、その直後でした。後場に入る直前、突然の大きな売りがやってきました。何がなんだか分からず、昼休み直前だったのもあって、何もできないまま前場が終了しました。終わってみると、チャートは長い上髭をつけて始値近くまで戻ってきていました。
てんむす
タイムラインは売り崩しに対して「安売り乙」「押し目ありがとう!」などといったポジティブな発言で溢れていました。私は一抹の不安を抱きつつ、みんながそう言っているんだから大丈夫だろうと自分に言い聞かせました。
前場での興奮が冷めやらぬ昼休み中、後場の板が並びます。それはもう悪夢でした。売りが買いを圧倒し、ストップ安に迫る勢いだったのです。
私は昼食も食べずにTwitterや掲示板を読み漁りました。
空売りで逃げ遅れた機関の見せ板だ、という人。ストップ安で買わせてくれるなんて親切だな、という人。もうこの銘柄は終わったから早く逃げろと忠告してくれる人もいましたが、私の目に飛び込んでくるのは、やはり自分に有利な情報のみ。
てんむす
何かが喉に引っかかったような気持ちのまま後場は始まり、祈る気持ちをあざ笑うかのように株価は出来高を膨らませながら沈んでいきました。
恐怖の下落サイン、高値圏での出来高増の大陰線です。それも長い上髭つき。
とはいえ、ここでさっさと逃げていたら利益は出ていたんです。でも、私の頭には三桁の含み益がこびりついていました。最高値から比べると含み益はかなり減っています。売ってしまったら、減った利益を確定することになります。
欲深い私は損したような気分になり、売ることができませんでした。今は一時的に下がっていても、一旦調整した後はもっと上を目指すものだと信じ込んでしまっていたんです。
塩漬けの日々
こうなれば、私はただの思考停止した鴨です。下がるたびに一枚二枚と買い増し、ガチホを続けました。株価はどんどん下落し、とうとう含み損になってしまいました。どんなに粘ったとしても、この時点で負けを認めてばっさり切るべきでした。
でも、含み損が増えても我慢してホールドし続けました。
そうさせた一因は、Aをホールドしていた仲間たちとの関係にもありました。おかしな話ですが、お互い含み損を耐えることが「仲間」たちとの唯一の絆のようになっていたのです。
(もちろん、「仲間」の皆さんの実際のポジションがどうであるかは知るよしもありませんし、含み損を抱え続けた原因を全てそのせいにするわけではありません)
てんむす
余力はないのでナンピンすることはもちろん、他の銘柄を買うこともできません。ただ毎日Aのニュースを探し、呟きを探し、少しでもいいニュースにはいいねをつけ、悪いニュースは無視をする。そんな不毛なことを続けるしかありませんでした。
「Aはもう終わったんだから諦めろ」
遠回しに助言してくれる人がいても、ホルダーにとっては敵のように見えました。もっと安く買うために売り煽っているんだと決めつける人もいました。
全員でブロックして敵のアカウントを凍結させればいいなどと、子どものけんかレベルのことを言い出す人もいました。
この頃から、私はAで繋がった仲間内に違和感を覚え始めていましたが、損失がこれ以上膨らむのを恐れて何も言えません。Aが上がってほしいと思う気持ち自体は一緒だからです。
他に買いたいと思う銘柄が出てきても、この状態では手を出すことはできません。その銘柄はどんどん上がっていきました。機会損失したダメージは思った以上に大きく、株アプリを開くことすら億劫になりました。(皮肉にも仕事は現実逃避となってはかどりました)
トレードがしたかったはずなのに、ひとつの銘柄に特別に思い入れてしまったがために身動きが取れなくなるという大失敗でした。
損切りと反省
ちなみに、煽り屋さんはいつの間にか売り抜けていたようです。影響力のある人ですから、自分が売る場所を教えてくれるはずがありません。
恐らく、大陰線をつけてチャートが崩れた時には既に手放していたのでしょう。もしかしたら、あの日チャートを崩したのは煽り屋さんご本人かもしれません。真実は誰にも分かりません。
その後も株価は戻ることなく、月日は流れ……。
ボロボロだった私の背中を押したのは、某ウルフ先生のこんな感じのツイートでした。
「盆栽投資をして含み損にしている人は私が売りボタンを全部押してあげる。ここから一緒に頑張りましょう!」(要約)
信用分の返済期限も迫った頃、私はこのままAと心中するくらいならと、大底で全て損切りしました。
てんむす
この損切りで私は口座にも心にも深いダメージを負いました。
借金こそないものの、何度も入金を繰り返していたため、資金は10%以下になってしまいました。この損失を埋めるのは並大抵のことではありません。なにせ10倍以上に増やさなければ元の資金に戻せないのです。
あの時、欲を出さずに「おかしい」と思った時に利確できていれば。その後すぐにロスカットできていれば。
投資(投機)において、いかに損失を少なく抑えるかというのが一番大事なんだと身をもって理解したのでした。高すぎる勉強代です。
てんむす
まとめ
さて、最初の話に戻ります。
いわゆる煽り屋さんは悪なのでしょうか?
私は違うと思います。他人の甘い言葉に乗せられるまま、自分の違和感を無視してガチホし続けた自分が悪いのです。
煽り屋さんの推奨銘柄も、売買の仕方によっては大きな利益をもたらしてくれます。もちろん、わざとはめ込んでくる人もいるかもしれませんが、それも利用してのし上がってやるくらいの気持ちがないと相場の世界で生き残るのは難しいと感じます。
それまでの私は、戦争に丸腰で出かけていったようなものでした。
てんむす
それ以来、私は誰の言葉も信じることをやめました。尊敬するマスターやウルフ先生はじめ強者の方の呟きも、参考にさせていただく程度です。
時間軸が短い場合は特に、優秀なトレーダーほど「買い」と言った次の瞬間に売っていたりします。間違ったら速攻で損切りもするでしょう。状況は刻々と変わりますし、突然の悪材料が出たりと、イレギュラーはいつでも起こりうるのです。一寸先は闇、一秒先はストップ安なのです。
本当に良かれと思って勧めた銘柄が、次の日には駄目になることなんて日常茶飯事です。(だからこそ私は個別銘柄は誰にも勧めたくありません)
それに気づくまでに、私はずいぶん遠回りしました。
そして気づいた今も第一目標の億トレーダーには遠いので、これが正しい道かもまだ分かりません。
てんむす
というわけで、お恥ずかしい私の失敗談でした。だらだら書いていたら結構長くなってしまいました。
私も二度とこんなようなことがないように、自分を律する日々です。うまくいくとすぐに調子に乗ってしまうので注意しなければ。
ここまで読んでくださってありがとうございました。